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H269 lounge chair by Jindřich Halabala
チェコスロバキアの家具デザイナー「ハラバラ」の傑作。作られた時代は1930年代、約90年前に誕生したことになる。豊満な見た目に相応しく座り心地はこの上なく優雅だ。曲木技術を自在に操り、存分に表情を作っている。座ると緊張がほぐされ、しなやかな思考を引き寄せる。生涯を通して、作家、技術者、教育者と多岐に渡り活躍したその根幹には、バウハウスの理念が基づいていたとされる。第一次世界大戦、第二次世界大戦とその狭間で独自のデザインを貫き通した強い信念が、作品にしっかりと宿っている。
DCW by Charles and Ray Eames
Cube nesting tables in solid teak by Jens Harald Quistgaard
作品からほとばしる瑞々しい刺激が特別な光景を生み出す。クイストゴーの世界観はすこぶる超越的である。人生を深く広く視野を広げよと誘導してくるのだ。空想と戯れながら思わず微笑んでしまう。無垢のチーク材が組み手の美しさを強調、斜走木理で意匠を表現、仕事の入念さが作品を神秘に近づけている。アイデアを彫琢し、素材を美術品へと導くクイストゴーの手腕には驚くばかりだ。
Model FH 9230 armchair by Henning Larsen
思い掛けない作品と出会った。デンマークが誇る建築家ヘニングラーセンの作品だ。ミッドセンチュリー時代、次々と生み出された息をのむ建築物は、その斬新さゆえあらゆる方面に多角的影響を与えた。椅子の形状とスチールの輝きに当時「光の巨匠」と呼ばれた所以が見て取れる。
AP38 Airport chair by Hans J. Wegner
1959年、コペンハーゲンのカストラップ空港内ラウンジ用にデザインされたAP38は、空港ならではの様々な特徴を持つ。子供からお年寄りまで立居がスムーズにできるよう絶妙な角度を設定、たとえ恰幅のよい人が勢いよく腰をかけてもびくともしない強度、予め内側にL字スチールが嵌め込まれているのだ。L字はデザインとしても絶妙なバランスを担っており、椅子全体の威容を鼓吹している。なぜウェグナーの作品が人々を幸せに導くのか、どうやら作品に思い掛けない機微が宿っているようである。
CU01 Japanese series cabinet by Cees Braakman
1934年、PASTOEで家具作りに携わったのが弱冠17才、非常に若い頃から才能を開花させた作家だ。デザインを始めてから13年後にアメリカを訪れた際はイームズ夫妻が手掛けるデザインに呼び起こされるものがあった。また、のちの日本滞在では日本が誇る”用の美”に魅せられ、「Japanese series」が華麗に誕生した。長い年月をかけて培ってきた家具作りの経験が形状に響き渡っている。デザインで浮き彫りになる素材の役目も決して蔑ろにしない。シーズ・ブラークマンがデザインした作品は、今後ますます貴重になると想起される。
Bookshelf with desk in oak by Johannes Sorth
どの部分を取ってみても使い手への心遣いが感じられる。スムーズに開閉する蛇腹の内側にも細かい細工が施され、日常使いの満足度を満たしてくれる。ものづくりに対しては「誇りと責任感」両方がないと長くは続かない、当時のデザイン記述の言葉に納得である。作家の充実した感性や隅々まで配慮の行き届いた職人の心意気が気持ち良さを生む作品である。
Wire leaf pattern lounge chair by Cees Braakman and A. Dekker
ブラークマンとデッカーのクリエイティブさが意気投合、それまでの経験値が確りと合致、彼らの感性が一つの作品に注ぎ込まれた。家具とアートの境界線を有意義に楽しむと同時に、インダストリアルの波を存分に味方につけ相互に価値を高め合った。追憶のデザインが今なお与え続けている影響は大きい。卓出したアートピースだ。
F1 desk chair by Willy Van Der Meeren
鋭い視線と行動力でベルギーのモダニズムを牽引、飽くなき追求のもと生まれた逸品たちは、膨れ上がるほどに好奇心を刺激する。当時、ヴァン・ダ・ミーレンが設計した建築物や家具は、超越的デザインと世間を驚かせた。建築に用いたプレハブ軽量資材は、柔軟で社会性に富んだアイデアと称され、信頼できる造形美のへの道標となった。感覚を研ぎ澄ませ作品を作り、それを提供することで一層彼の中の芸術がリアリティ化したのだ。既成概念に囚われることなく生涯独自の美を追いかけた彼の一途さが、作品の隅々まで行き渡っている。
AT 312 dining table in oak by Hans J. Wegne
清澄な空気感に思わずため息が出る。全ての角が美しい丸みを帯びている。見えない箇所にまで微細な工夫が施されている。使い手に対するウェグナーの配慮の深さ、惜しみない考慮が垣間見える。作り手が自身を追い込み、ものづくりに真剣に取り組む姿勢が作品に表れている。デザインの真骨頂、伸縮の美もまた溜息を誘うだろう。
Spinetto dining chair by Chiavari
場所を選ばず、今そこにある空間を美しく際立たせる。スピネットダイニングチェアは、輪郭に含まれた絶妙なラインで景色を見事に吸収し、そして経年美を目一杯に解き放つ。キアヴァリが抱いた美の概念が卓越したデザインに反映され、今も存在している姿を見るとそれだけで感慨深い。「椅子のある風景」という言葉がぴったりな作品だ。
Armchair in Brazilian rosewood by Ole Wanscher
彫刻作品と言っても過言ではないだろう。優雅で趣あるデザインだ。まずはアーム、緩やかな曲線を描きつつ美しい流れのまま肘置きとしての役割をまっとう、接合部というよりは自ら座面を挟み込むというデザインに目を奪われる。ヴァンシャーらしい設え(しつらえ)だ。それまで世界中にあったあらゆるデザインを研究し作品に生かしている。後脚の形状はアンピール様式を彷彿とさせるし、家具の原型が生まれた古代エジプト時代から18世紀の英国デザイン、中国デザインに至るまでをヴァンシャーらしいシャープな視点で作品随所に刻み込んでいる。(その後、萌芽的に誕生したモダンデザインは概ねヴァンシャーの影響を受けているのは言うまでもない。)無駄なものを剥ぎ落とし、究極の削り込みが施された作品に余念ない作家魂が見て取れる。眺め続けても決して飽きることのない作品である。
Sideboard in solid oak by Kurt Østervig
研鑽を積んだ作家ならではの細密さ、全てに於いて収まりが良い。用いられた無垢材はずっしりと重厚さを醸しながら、確実に使い手の要望に応える。その様は当意即妙、作家の想いが作品を通して届けられる。収納部を見ていると、物の整理整頓が心を整える近道だと念を押されたように感じた。端然とした姿が非常に美しい作品である。
Model JH 503 in mahogany by Hans J. Wegner
1949年、巨匠Hans J. Wegnerによってデザインされた造形の美「The chair」。J・F・ケネディとリチャード・ニクソンがテレビの討論会で座った椅子というのは、あまりにも有名なエピソード。優雅なフィンガージョイントは揺るぎない姿勢で泰然と構えている。高い職人技術が求められた非凡な曲線、そして妥協とは程遠い超凡な削り込み、秀作になるにはそれだけの理由があるのだと納得の作品である。
Chest of drawers in rosewood by Niels Clausen
つつがなく静謐な印象を放つ実に魅力的な作品である。濃淡が美しいローズウッドの風合いが、形状と共に波動を響かせる。自然を感じながらデザインを尊ぶ秘訣が詰まっているようだ。家具といっても侮ること無かれ、作家が精魂込めて作った作品だもの、知識や情報、気候の変化さえも吸収し経年を重ねている。あなたには聞こえるだろうか、人生は工夫次第だと傑作が語りかけている。
FJ-02 sofa in yamazakura by Finn Juhl
フィンユール作品に関してたくさんのことを学んできたが、そびえ立つ豊かなデザインを目の前にすると全てを理解したなんて烏滸がましくて到底言い難い。逸品たちが隠し持つ静かで奥行きのある世界は、眺めると微妙に振動を始める。それらは感性への刺激となって使い手にインスパイアする。手間のかかる作業に誇りが煌く瞬間だ。磨きのかかった輪郭は新しい世界を受け入れる。作り手と使い手、時空は違えど作品が引き合わせる妙趣は人生の大冒険である。
Balloon chair by Hans Olsen
この椅子と過ごすことで、今まで知らなかった選択肢が生まれそうだ。いや、選択の基準に変化が起こると言った方が正しいかもしれない。加わったのは飛びっきり魅力的な選択基準、ユニークな形状と暮らすと思いがけないアイデアが思い浮かぶものだ。素通りしていた自身の感度に輝きが芽生え出す。ものの捉え方が解放され、興味深い立ち位置を好むだろう。Hans Olsen作品のユニークな形状は、あなたの視野を広げ、そして視座を高め続ける。アートピースとの出会いとはそういう発見を手に入れることである。
Coffee table/ side table in rosewood
悠然と構えた姿を隅々まで目で追う、はっと我に返る、気がつけば見惚れてしまっている。作家の見てきた風景がじわじわと作品に滲み出ているようだ。デザインされてから60年が経過、しかし作品はびくともしない。両端のエッジを引っ張るとエクステンションリーフが凜然と顔を出す。(職人の腕の見せ所!)あまりの美しさに声が出そうだ。丁寧な当時の手仕事、今から思えば気が遠くなるほどの工程を辿っている。
High back falcon chair by Sigurd Ressell
シグード・レッセルの瑞々しい感性がそのままデザインに投影された作品、いつ見てもとても興味の注がれる独創性豊かなデザインである。花弁を守る萼のように四方から座面を吊り支える、座ったときの体の塩梅が見事なまでに調和する抜群の座り心地、まさしくオンリーワンの強みが凝縮した作風が楽しい。
Model OS 36 sideboard with tambour doors in rosewood by Arne Vodder
表現の形式が理想的、サイドボードが自信満々に作家アルネヴォッダーの熱情を伝えている。丹念に作り込まれた細やかな配慮も包み隠さず魅せてくれる。徹底的に磨かれた感性がものづくりに挑んだとき、様々な枠が外されることを理解する。作品の根幹をつかまえながら感受性を見事に投影するのは並々ならぬ深智である。彼の作品が時代の産物として取り上げられるのも得心がいく。さて、言い忘れてはいけない、この作品は裏面にも拘っている。惜しみなく綺麗に突板があしらわれているのだ。部屋の間仕切りやパーテーションとしても大活躍、機能美さながら多用途という面も重ね持っている。
Tray table in rosewood by Poul Hundevad
ローズウッドの表情がさりげなく辺りの空気を巻き込み、じわじわと心を惹きつけてゆく。見ているといつの間にか気持ちが穏やかになり、安堵にも似た感覚にさせてくれる。どこまでも配慮の行き届いた、見事な削り込みはセンシティブでまるで生き物のようだ。細い線が互いに支え合い絡み合う様子はまさに芸術的。天板が静かに外れ、トレイに姿を変えるとき、あなたはエッジの削り込みを手の内にする。それは、作り手の知恵に裏打ちされた美しさの究極の形である。
DB01 sideboard by Cees Braakman
なだらかな木肌の流れにユニークな脚先、美しい描写が円熟を見せつける。ブラークマン作品は心の振り子にそっと手を差し伸べ、ゆっくりと楽しむ術を教えてくれる。デザインに紛れ込ませた作家独自の手腕が随所で効いているのだ。降り積もるアイデアを一つ一つの作品に封じ込めたブラークマンの個性がキラリと輝く作品である。
‘Pirkka’ Dining set by Ilmari Tapiovaara for Laukaan Puu,
とっておきの空間作りを人生に例えたい。そこにはアイデアの柔軟性が必要不可欠。十分な経験があなたの今後を左右するように、目に飛び込む空間があなたの生み出す思考を左右する。つまり、目にするものが人生を作っているということ。デザインに宿る並外れた才能、律儀な線、その先に続いている景色、芸術作品ゆえ生まれる言葉などなど、揺るぎない個性を爆発させるタピオヴァーラ作品は、いつだってデザインの重要性に気づかせてくれる。使い手の人生に面白い現象を引き起こすのは言うまでもない。
Model 2213 Sofa by Børge Mogensen
心を掴んで離さない希少素材が形状を更に魅力的に押し上げている。巨匠ならではのデザインは、使い込むほどに味わいが増していく風合いの伸び代が素晴らしい。追求のその先をじっくり楽しんでいるような作品である。優雅に雑詠を慈しむゆとりのようにあれこれと思考の巡りをよくしてくれるのは、モーエンセン作品から学ぶ「形状の吟味」や、因習にとらわれない斬新さからの恩恵。力強さの中に優しさを調合してくれる作風は、決して色褪せず長く愛され続けるに違いない。
Model 210 bar coffee table with Willy Meysmans ceramic by Alfred Hendrickx
テーブルの中に小さなバーが備わっているなんてなんだか素敵だね、とディーラーと笑い合った。1956年、デザインの幅がぐんと広がりを見せた時代、Belformのために設計されたAlfred Hendrikckxの作品は、その斬新さから注目を浴びた。黒い漆塗りの木製ベースが角度で表情を出しながらスライドパネル付きの隠しバーにユーモアを注ぐ。さらに覆われたセラミックタイルで個性を爆発させるという塩梅。デザインの醍醐味がギュッと詰まった笑顔を誘う作品である。
Bang&Olufsen Stereo rack in rosewood by Jacob Jensen
この形状に潜む思い掛けない天分が、作家の気っ風を思い描かせる。数々のプロダクトを生み出したイェンセンならではのもの作り、作品を置いたときの風景が使い手の日常に与える影響を細部まで見計らっていたような面倒見のよさである。宙に浮いた独特の輪郭が至極美しく、機転を効かせた間仕切りの配慮と合わさって限りなく個性的だ。作家の気持ちと使い手の気持ちが合致したことを強く感じ取ることができる素敵な作品である。
Amsterdam chair by Pierre Guariche
奇跡的に出会えたガーリッシュ作品、目に飛び込んだ瞬間日本へ連れて帰りたいと強く願った。いつもより格段にワクワクの回路が太くなっていた。素晴らしい家具との出会いは、その先に待ってくれているお客様の笑顔だったり、暮らしに芽生える素敵な脈絡だったりを想像させてくれるのでとても貴重だ。今まで平坦だった物の見方を立体的にしてくれるのも実は日常目に留まるデザインのおかげだったりする。時折おとずれる脳漿を絞る瞬間とて、今まで見てきた形状に影響を受けていることも少なくない。今ここで、読んでくださっている方に、このような形でガーリッシュ作品を紹介できる喜びは何ものにも替え難い。
Landi armchair by Hans Coray
スイスのデザイナー「ハンス・コレー」がデザインしたランディチェアをご存知だろうか。当時非常に珍しかった板状のアルミを圧縮し、パンチングを施した作風にはバウハウス時代独特のセンスが宿っていて興味が注がれる。もともとは1939年に行われたスイス国際博覧会(Schweizer Landesausstellung)のためにデザインされたのだが、才能に富んだ傑作は瞬く間に広がりを見せ、デザイン史に残る名作となっていった。時代が変化しようとも、良いものは受け継がれしっかりと残って行くのだ。
Heritage chair in mahoganyby Frits Henningsen
全てが円熟、美の骨頂である。これほど美しい逸品「Heritage chair」に出会えるとは、家具屋冥利に尽きる貴重な体験である。Heritage chair はその名の通り、存在自体が遺産であり伝統なのだ。ヘニングセンデザインの創意溢れる優雅な曲線美は貫禄と隣り合わせにロマンチックな印象を抱かせる。独創的に波打つ形状が、今まで知る由もなかった世界へと案内してくれる。この偉大な作品が持つ無双の風格、ぜひ店頭でご覧いただきたい。
The cross lounge chair in teak by Fredrik Kayser
大きく息を吸い込んで作品との対面に少しの緊張感を紛れさせた。目の前に現れたカイザーの作品は、実に妙を得ていて何者にもとらわれない自由な面持ちでたたずんでいた。いつもお世話になっているディーラーから「The cross lounge chair」を見つけたと連絡が入った時、僕は正直言うとその時点で既に日本へ連れて帰ることを決めていた。この並外れた素晴らしいデザインを、家具好きの方々と共有したいと願うのは僕の癖で、そのために家具屋を続けていると言っても過言ではないのだ。フレデリック・カイザーのデザインには極めて感性を冴えさせる節があり、そして普段気付かなかったポイントへ着眼させてくれる。あっぱれで型破り、それでいてグッとくる傑作なのだ。
H269 lounge chair by Jindřich Halabala
チェコスロバキアの家具デザインを牽引、インテリアデザインの先駆者として名を残した「ハラバラ」の作品は、世界中でも評価が高く家具マニアが到達する究極の一脚だとディーラーが話した。1930年代、時代背景と共に様々な要素が組み合わさって、とびきりの「愛嬌」が生まれた。ハラバラのデザインは飛び抜けて印象が深く、ユーモアに溢れており、そして見る側を虜にする。曲木が描く優雅さは、椅子の領域を遥かに飛び越えながら不思議な世界へと招待する。とっておきの作品と過ごす日々はまるで物語のようである。
DU02 Japanese series sideboard by Cees Braakman
過ぎ去ってゆく時間を蔑(ないがし)ろにせず、日々の移り変わりに優しく耳を傾けたい。心の持ち方が日々を紡ぐ一張一弛のような役割に、そうして素敵な人生が出来上がる。目に飛び込む景色の中に美しいシーズ・ブラークマンの作品があった。しばらく見惚れ忘れてしまっていた瞬きを繰り返す。やはりこの作家の作り出すものは、用途の役割だけで存在しているはずがない。経年を刻みながら趣を携え、日々の暮らしに充実を残す。使い手の心情によって変化する表情も、人生を恭しく見守っているようである。
Model134 easy chair in teak&oak by Hans Olsen
質の高い完璧な曲線が日々を通してあなたの感性に語りかける。その作用は絶大、何を見てきたか何を感じてきたか、今まで培われてきたあなたの感性をハンス・オルセン作品は掌を広げて受け止めてくれる。広がり続ける固有の想像力を掻き立ててくれる。人生は流れる時間の積み重ね、日々を大切にしている人々がデザイン性豊かなものに惹かれるのは、作品が発しているオーラを感じ取りながら自身の心象に投影しているからではないだろうか。年数を重ねる醍醐味は本質を得ているものの愉しみ、人も家具も同じである。(New fabric)
Model F675 butterfly lounge chair by Pierre Paulin
ピエール・ポーランが描き出すデザインはファッション性に富んでいる。観る側の自由度をどんどん広げる節がある。アイデアは無限大だと作品が微笑みを浮かべているように映る。その様子が刺激となり、勢いを帯びて益々魅力が増してゆくのだ。眺めれば眺めるほど随想していた通りだと実感する。家具好きを魅了し続けるこの作家のデザインは、作り手と使い手の相互間に計り知れない何か特別なものを生むようである。
Clam chair by Philip Arctander
可愛いフォルムが特徴的なフィリップ・アークタンダーの代表作「クラムチェア」。見るからに心を温和にしてくれる。包み込むように体をすっぽりと迎え入れてくれるので、心が和むのだ。次に少し距離を持ってオブジェを観るように鑑賞してみた。作品を離れて眺めると脚先の丸みが効果を出していることに気付く。クラムにシープスキンが用いられる理由は明快だ。もこもこした雰囲気が温かな風景を作り出し、空間の印象を絵画のように写す。その様子は、まるでライフストーリーに幸せを溶け込ませているかのように精美である。
Shell lounge chairs by Miroslav Navrati
色合わせを楽しんでいる作家の姿が目に浮かぶ。ミロスラヴ・ナヴラティの作品に宿る至妙の面持ちはユニークで軽快、絶妙に施された形状と素材のバランスが目の肥やしとなり、ひねりの効いた日常を導き出す。芸術性を帯び、実用を兼ね備え、そして何よりアイデアを掘り起こす。使い手の五感を刺激しながら存在し、時にリラックスを提供する、まさに匙加減が愉快な小粋作品である。
Boomerang rocking chair by Mogens Kold
この作品を初めて見たときの感想だが、手帳には「見知らぬ場所なのにようやく辿り着いた感。」と書かれている。経験したことのない時間の流れと超然としたデザインが相まったのだろう。ブーメランチェアというその名の通り形状が至極ユニークで、非凡のみが持つ佇まいを放つ。デザインが確固たる信念を持ち合わせているようである。作家の偉大な想像力は、空間に奥行きを持たせると同時に時間の尊さを際立たせるに違いない。
Model FD130 sofa in teak by Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen
1960年代にデザインされたPeter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsenの作品。彼らが生み出すデザインの特徴は挑戦し続ける姿勢がデザインに表れていること。時に大胆な挑戦にもかかわらず、作品に収められた時には小綺麗に装われ、フォルムの線を追うにつれ、どんどんその耽美な容姿に引き込まれていくのだ。比類なきデザインの美しさは、日毎に変化するさざ波のように使い手の感性を磨きながら同じ風景に奥行きを持たせるだろう。
Model FH3103 T-chair by Arne Jacobsen
ヤコブセンデザインのイメージは、道草の途中で思いがけず大好きだった人に出会ったようなウキウキ感を伴う。更に、ユニークな形状は作品自らデザインを面白がっているように錯覚させる。空間にポツンと置いたときの印象が一変する様子は、なんとも言えない味わいである。個性あふれる造形と、日常の交わりを心ゆくまで愉しみたくなる、そんな作品だ。
No. 8 dining chair in teak by Helge Sibast
クリエイティブな想像力がギュギュッと凝縮したヘルゲ・シバストのダイニングチェア。細い線を幾重にも伸ばした芸術的技法が、座面を宙に浮かせる格好で視覚的効果を生んでいる。どの角度からも美しいが、横から見た「Y」の特徴ある容姿は心動かす究極のモダニズムである。また、俯瞰から眺めると、背面から肘置きへは「U」の文字、その先端から後脚へとデザインが流れてゆく。この構造美からも、シバストの秀峰にも似た才能の豊かさをうかがい知ることができる。
NV53 Settee in teak by Finn Juhl
削り込みの美しさに、作家と職人の情熱がみなぎっている。造り手の尊い希求心が細部に現れ見る側を驚かせるのだ。私は実際興奮気味で撮影に挑んだ。フィン・ユールはどのような想いを抱きながら線を描いたのか、書物に記されている資料だけでは真髄は掴めない。真正面からの姿、真横から、目と心で作品を追いかける。背に光を帯びた神秘な佇まいに吸い込まれそうだ。緩やかな曲線に歩み寄ると更に今度は作品の影が生む濃淡が気持ちを拐ってゆく。作品の持つ魅力にどんどん心が奪われていく、心酔を巻き起こすとはまさにこのことである。この作品の奥深くに潜む真髄、それを見つけるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
TU30 dining table in rosewood by Cees Braakman
「ほほう、モダンの中にもこういう捉え方がありますか」と、思わず目を凝らさずにはいられない。スチールとローズウッドの親和性を独自の世界観で形状化している。僕はしばらくデザインを多面的に眺めながら作品の持ち味をじっくりと味わった。ブラークマン作品はその独特の作風から雑念を排除させる節がある。家具作りへの深い思いがそのまま作品に表れていて、それが観る側にも伝わるからだろう。また、時間を刻む愉しみと同時に感性を研ぎ澄ましてくれるのも特徴の一つ。世界中でも評価が抜きん出ており、益々希少性が高まっているのも安易に理解できるのだ。
Spinetto dining chair by Chiavari
1950年代に誕生した「スピネット」キアヴァリチェア、当時の時代風景を記憶しながらたたずむ容姿はおしなべて繊細で美しい。見れば見るほど作るのに高い技量を要したと推測される。作家の人間性が垣間見れるほど線が特徴的で優雅なのだ。空間に置かれた際に生まれる詩的な雰囲気は音を奏でるようにあなたの感性に響くだろう。
AP19 Papa bear chair in teak by Hans J. Wegner
この優雅な形状に腰を下ろしながら大きく息を吸って、そして目を閉じて感じて欲しい包み込まれる優しい感覚を。その目線から日常をぐるりと見渡すと、周りとの繋がりに線が芽生えないだろうか。掛け合う言葉も感情も実際には心の持ちようでどんどん良い方へと紡がれていくものだ。ウェグナーの作品は、そのことを鮮明に示してくれる。感情を整えながら心地よく暮らすことに助力を惜しまない。(普段は気に留めていなくとも、住まいの空間から受けている影響は思いの外大きい。)それは見方を変えれば、ウェグナーが使い手の生活空間にポンと置いていってくれた感性のお裾分けに近い。日常を豊かにしてくれる極上のお裾分けだ。パパベアチェアが不朽の名作と呼ばれる所以は増え続ける一方である。
RY20 cabinet in teak & glass by Hans J. Wegner
この可能性に満ち溢れた存在感を目の当たりにすると、日頃使っていなかった思考の回路がツンツンと刺激され「感性の電流」が全身にゆっくりと流れ出す。まるでデザインとの同化を楽しむように素直にウェグナーデザインに触発され、呼吸を整えながら秀逸作品の隅々を探索する。接合の美しさに目が止まる。これだけの大きさ・重量を分散させるためには相当な配慮を要するはずである。特にデザイン性の高い細い線が強度を増すためにどのように配置し接合するべきか、徹底的に分析しながら設計されている。引き出しの塩梅、取手の持ち具合、収納の分布も申し分ない。作家の感性を結集した作品には、性格がある。
Model GS195 sofa & daybed by Gianni Songia
デザインが持つ特殊な性質により背もたれが可動、瞬時にデッドへと変形してくれる。日常その時々に応じて自由自在に変化を遂げる柔軟さは愉快なほど。また、重厚さを担う力点は用の美を備えながらしっかりと作用、圧倒的に魅力を噴出する。充実度への配慮とデザインの関係性も見事と言える。それは、物事を考え抜いた向こう側にしか見えない世界があるのとどこか似ている気がしてならない。さらに、ジャンニ・ソンギアの斬新な造形には使い手の思考を開眼させるという特徴があるのだ。
Small sideboard in teak
家具職人が努力を惜しまず蓄積した技術が一つの作品を作り上げ、そして長い年月大切に受け継がれ今に存在する。この魅力的な流れをじっくり堪能させてくれる作品だ。小ぶりながらも存在感があり、頼もしさを感じさせる。今では作り得ない細部のこだわりがいい、規格外の好奇心は見ていてワクワクする。心奪われる取手の形状は、まるで「人生は型どおりでなくても良いのだ」と物語っているように感じる。見応えのある素晴らしい傑作が既成概念を取っ払ってくれるのだ。非常に面白いサイドボードだ。
Model NV 48 armchair in teak by Finn Juhl
時代の移り変わりをびくともせず、堂々と底知れぬ魅力を響かせている。デザインされてから70年以上経ったとはいえ、長い間維持され続ける品質からは類似を遠ざける気迫が見て取れる。フィン・ユール作品に心を強く引きつけられるのは、生涯抱き続けた熱い思いを見事に形状で表現しているからだろう。その価値は計り知れない。
Bang&Olufsen Stereo rack in rosewood by Jacob Jensen、
自由にしなやかに思いのまま出し入れできる非常に優れたデザイン。これほどまでに音楽好きを唸らせ続けるステレオラックが他にあるだろうか。痒いところに手が届くたびに満足感を覚えるのだ。愛着を抱かずに存在させるなんてできないと思う。森の木が突然一斉に芽吹くように自由な発想がデザインを噴出させた60年前、当時の豊かな感性を現在に取り入れる喜びはひとしおだ。新鮮で魅力的なものがいつも新しいとは限らないのだ。満足感が深層に到達する瞬間を味わえる、まさに珠玉の作品である。
NV53 in teak by Finn Juhl
同じ光景を見ていても座っている椅子により景色が変わる、このことを教えてくれたのが巨匠フィン・ユールの作品だ。何がこんなにも気持ちを昂らせるのか、この作家の作り出す世界は未踏の領域に旅をさせる。浮かぶ言葉、独創的なアイデア、日々への情熱、待ち遠しい明日を約束してくれるのだ。また、枠を飛び越えた「存在の美」も次元を異にする。時折目に飛び込む美しい形状は、光を浴びながら日向ぼっこを楽しみ、最も純粋に、居るべき場所を確保しながら優雅に佇み、見ている側を魅了し続ける。圧倒的逸品、得も言われぬ美の象徴である。
Modus easy chair in oak by Kristian Solmer Vedel
この斬新な造形美はどれくらい充実した時間を提供してくれるのだろう。どれくらい深く使い手の感性を揺れ動かすのだろうか。そうだ、日常に影響を与えるにはどこに置くのがベストだろうか、見つめていると思いはぐるぐると脳内を巡り、我に返る頃にはすっかり椅子が醸し出す雰囲気に飲み込まれてしまっている。ゆったり構えながら、時に絵画のように空間に浮かび上がる。クリスチャン・ヴェデルの美しいデザインは、間違いなく日常の光景を尊いものとして印象付けるだろう。
Model 1001 sofa by Sven Ivar Dysthe
Sven Ivar Dystheはノルウェーのオスロ出身だが、一定期間過ごしたデンマークで様々な刺激を受けている。オスロに戻り、その才能を開花、1960年にはミラノトリエンナーレで展示されたこちらの作品がノルウェー20世紀デザイン史の主要作品の一つと高く評価されている。椅子が持つ幾何学的構造が独特のデザインと称賛され「American Institute of DecorationsInternational」を受賞した。Dystheが生み出した数々の作品の中でも、こちらの「Model 1001 」シリーズは大傑作として君臨している。ローズウッド、スチール、レザーを巧みに組み合わせ、余韻に浸らせるほど魅力的な形状に導いた。時が流れようとも、固有の感性が人々に与える知性は熟し続ける。異彩を放つ作品である。
Model A232 “China” cabinet in teak by Børge Mogensen
この高い完成度に磨きをかける為、丁寧に入念に、持ちうる限りの知識を手掛かりに心を込めてメンテナンスを施した。「美しい形状を見事に作品にできて本当に良かったね。」時にはモーエンセンと対話を試みながら、当時の技術を分析しながら、作家と職人への理解を深めながら、僕は作業を進めるのだ。そうすると思考が流れていく道筋に軸のようなものが立ち上がっていく。どうやら作家が僕を信頼してくれているようだ。僕はどこかで眠っているモーエンセンが喜んでくれるよう作品に息を吹き返すことを考えながらメンテナンスに注力する。そうしておすすめの作品が頭角を現し出す。あなたの生活が素敵になることを常に作家も僕も願っているのだ。
Basket chair by Gian Franco Legler
「シンプルさが心の風通しを快適にしている。まるで小気味良い空気感に包まれているようだ。」この作品を見たときの私の第一印象である。座面から伸びた脚の広がり(絶妙な角度)が面白味を併せ持ち、こちらの感性をつかまえる。また、籐の密集効果を的確に表しているのは、スチールが描き出すシンプルラインゆえ。類まれな感性を放つスイスのデザイナー「Gian Franco Legler」の世界観が楽しい作品である。
BB54 secretary/cabinet by Cees Braakman
シーズ・ブラークマンが作り出す冒険的デザインはいつも新しい世界を開いてくれる。単に家具を家具として扱うという概念はひっくり返されてしまう。いかに僕たちは日常目にしているものから影響を受けているかを確認することになる。作家の抱いたデザインへの超越的な情熱が作品の至る所から伝わるからだろうか。ブラークマンの作風は絶えず堂々としていて、形状が放つ妙味や深度を十二分に楽しませてくれる。生涯、デザインへの挑戦を積み重ねてきた鋭い感性が「人生の醍醐味とは何だ」と本質を問うてくるだろう。
NV55 armchair in teak & cane by Finn Juhl
圧倒的美意識の高さが作品に凝縮されここに存在している尊さは、まるで「想像力を掻き立てる物語」のように観ている側の目を輝かせる。極限まで削り込まれた線の細さ、知性が詰まったディテールの繊細さは、フィン・ユールが抱き続けた作家魂に触れさせる。後ろ脚から背へと伸びた一本の線に絶妙な角度が設けられているが、この設計が美の真骨頂となっており、全体のバランスを整えながら椅子の魅力を噴出させている。デザインを知れば知るほど、作家がいかに難しいことへ挑戦しているのかが分かる。椅子と向き合った時間は、あなたのかけがえのない充実として深く心に刻み込まれるだろう。
Model JH540 valet chair in oak by Hans J. Wegner
辺りの空気が一変した。こんなにも一瞬で視界に飛び込む世界が色付くものなのかと嘆息してしまう。Valet chairが持ち合わせる豊かなデザインは決して椅子にとどまらない。形状に引きつけられ、思考転換を要される。異才を放つウェグナーの個性をデザインが顕著に物語っている。
SW87 dining chair in oak by Finn Juhl
良質ファブリックをぐるりと囲うように用いられた天然素材がとてつもなく美しい。優雅に広がる背面のデザインは、まるで自然の胸懐を忍び込ませているように趣深く映る。フィン・ユールの突出した才能が鮮明に際立っている。ぜひとも全ての形状が異なっている一本一本の線に着目していただきたい。もの凄いこだわりである。類を見ない形状が壮絶な印象を放ち作家の冒険心を忠実に映し出している。(New fabric)
Model GE 240/3 “The Cigar sofa” in smoked oak by Hans J. Wegner
ウェグナー作品の特徴は、日常に優しく寄り添いながら身も心もじわじわ満たしてくれるところ。日々過ごす中、少々安息を乱すことがあっても、家に帰れば落ち着いた場所で寛ぎを提供してくれる。使い手と作品との深い信頼関係により一層作品の価値が上がるのだ。ウェグナーの良さを存分に味わっていただきたいおすすめのソファーだ。(New fabric)
Boomerang executive desk with hairpin legs by Cees Braakman
このデスクを目の前にした時、僕の中で面白い現象が起きた。今の今まで僕自身知らなかった自分と出会えたような気がしたのだ。シーズブラークマンの力は偉大だ、彼の作品は見る側を刺激し、作品が呼び水となって感性の広がりを鼓吹する。アルベルト・ジェルジの言葉を借りればこうだ「発見とは、誰もが目にしているものを見て、誰も考えなかったことを考えることである」。デスクの領域をはるかに飛び越えている。
Freestanding shelving by A. D. Dekker
A. D. Dekkerの作品はモダン好きの間では常に話題の的になる。彼の遺した作品の中には、深く掘り下げて考え抜いた挙句、ようやく到達した手応えのような強さが備わっているのだ。一本一本の線が絶妙に配置され、美しく身を置いている様は、作品が持ち得る未知の領域さえも享受している。
Dining chair in teak
「臆せずに挑戦すること」デザインを眺めていると、この言葉が思い浮かんだ。純粋にアイデアを形にした椅子の特性を存分に味わいたいと思う。こちらの作品はデザイナーについては不明だが、作家の持ち味ともいえる確固たる部分がうかがえる。それは「自らの感性をつかまえに行く楽しみを人生の中で大いに得てほしい」というものだ。突出されたユニークな形状を心ゆくまで堪能したい。愛おしいチェアである。
Magasin du Nord armchair by Hans J. Wegner
見た目の細い線からは想像しにくいが、ずっしりと重たい。作品を眺めていると、地に足をつけ確実に人生を歩むことへの憧れが増してくる。テーパーがかった微妙な角度に目を奪われること数分間、椅子への想いと歩んできた人生の背景が交差する。忘れたくない時間を家具と共に重ねて行くことに実に好ましい作品だ
J39 Shaker chair by Børge Mogensen
モーエンセンデザインがいつも見えるところにある安堵感は想像しているよりも遥かに大きい。その優しさは、時間の拘束を緩やかに解き放つ。日々の暮らしが穏やかになり、視界に入る優しい佇まいが心身に浸み渡るのだ。家具が日常生活に与える影響は思いのほか幅広くて奥が深い。モーエンセンが生み出した作品は「座ると呼吸が整う椅子」その表現がぴったりだと思う。
EU04 sideboard by Cees Braakman
若い頃から独自の世界をたくましく切り開いてきたシーズブラークマンならではのデザイン。ため息が出るような視覚的迫力は培ってきた感性そのものと言えるだろう。また、メタルを用いた脚の形状は見事なまでに小手先が効いており、本体とのバランスを強みとして力強さを発揮している。60年以上経ったとは思えない斬新さに魅了される。独創性を大いに繰り広げた美しい傑作、今後益々珍重されるだろう。
Les Arcs chair selected by Charlotte Perriand
椅子が脈を打つように波動を奏でている。この独特の感触に心が躍る。椅子との出会い、共に暮らす意味合い、共有する人々との会話、すべての音や出来事を忘れたくない衝動に駆られる。不思議な力を兼ね備えた比類ない作品なのだ。ぜひ実際にご覧いただきたいと願う。
AP19 Papa bear chair & AP29 stool by Hans J. Wegner
ウェグナーの作風は非常にとりどり、それらは時にこちらの感性を耕してくれるゆえどんどん歩み寄りたくなる。20年前、家具屋になってまだ日が浅かった頃、初めて実際に見たパパベアチェアは私の心を捉えて離さなかった。呼吸の深さが変わり、胸の高まりを素直に受け入れた瞬間だった。あの感覚はまさに詩情的で「家具」への概念をそれまで捉えてきたものとはかけ離れた場所へ連れて行ってくれた。単に機能性や使用目的を基準にしていた家具の存在が、「感性を揺さぶられているかどうか」に重点が変わったのである。ウェグナーの作品が長く愛され続けている理由は、人生の背景あるいはものごとの見方が、変わるからではないだろうか。感性に働きかけながら日常への慎み深さを実感させる。好きな家具と日々を積み重ねる醍醐味は、実に計り知れない。
Plexus sofa in rosewood by Illum Wikkelsø
「心に留めたとっておきの話をしよう」「積み重ねてきたアイデアを語り合おうよ」イルムヴィッケルソーの作品はどうやら人の心をウキウキさせるらしい。目の前にして思わず笑顔が飛び交う会話を想像してしまった。想像力はどんどん膨張してゆき、思いもつかないアイデアをプレゼントしてくれる。まさに人の感性に語りかけながら惹きつけるツボを心得ているのだ。私はかねてからこの作家のファンだが、見れば見るほど「素材と形状」の相互関係を信頼という形で寄り添わせている作風に感動が増す。ヴィッケルソーは1999年にこの世を去ったが、彼の残した作品たちは永遠不朽である。
Rosewood dining chair by Johannes Andersen
異彩を放つ形状を眺めながら思考の散歩を試みる。見る角度によってはどこか風変わりでチャーミング、少し動かすと今度は凛とした格好。気持ちが引き締められたり、あるいは緩められたり。まるでこちらの心情を読み取っているかのように印象を変化させる。朽ちることのないローズウッドの美しさと手を結んだユニークな形状は、ヨハネス・アンダーセンの願いと共に人々の暮らしに円熟を運ぶだろう。
Rosewood coffee table
窓の外の景色を深くさせるのは、あなたの感性が豊かであり、そして平穏に保たれているから。培った感受性を自由に羽ばたかせながら、この美しいローズウッドが放つ杢目のデザインをご覧いただきたいと願う。自然が生んだ趣の深さは制限が無く優美でたおやか、そう、それらはかけがえのない時間の経過を刻み大自然の育みを表している。熟練職人により美しいテーブルと姿を変えた自然の結晶、きっとこれからも変わらず人々を魅了し続けるであろう。
Model 218 Jupiter lounge chair in rosewood with ottoman by Finn Juhl
フィン・ユールデザインのある風景を想像してみた。作家の世界観が色濃く反映した作品は、心地よい緊張感を生み出す。ひとつの出来事を多角的に捉える楽しみを運んだり、思慮深く本質を探らせる。モノとの付き合い方で人生の醍醐味がもたらされるとは、さすが妙手が生み出す逸品は違う。(いやはや椅子が置かれた風景を想像しただけで楽しめるのだからこの領域はなんとも奥深い。)フィン・ユールの芸術性の高さについては言葉ではなかなか書き尽くせないが、つねに影響を与えながら思考の軟化を手伝ってくれる信頼できる存在なのは確かなこと。美しい形状と感性を、ぜひ堪能していただきたい作品だ。
Tubular frame with rattan armchair by Arie Verbeek
ウッドとラタン、そしてメタル、この美しい融合はデザインに効果絶大。隅から隅まで配慮に満ちた形状は、素材が持つ各々の性質と見事に一体となっている。それは、当時のオランダ工業背景を物語っているようにも思える。椅子に座るひと時をどのように過ごそうか、楽しみと新しい発見が芽生えそうな作品だ。
Tm-03 side table & magazine rack by Cees Braakman
突き抜けた独自のセンスをデザインに反映させ、物作りに没頭したシーズブラークマンの希少な作品(今では美術品の領域に達している)。樺の木とメタルの使い方に極意が生まれるのは、鋭敏な感性が作用した絶妙な比率から。三点を軸にバランスを配分し、角度で形状を理想的に表現した。極めて洗練されているにもかかわらず、無骨に映るのも楽しい。しかしながら角度を変えればこれほど繊細なものはないと感嘆する。それはシーズブラークマンの人間性を表しているのかもしれない。異彩を放つ魅力的な作品だ。
AP19 Papa bear chair in rosewood by Hans J. Wegner
やっとここに辿り着いた、すっかり虜になってしまった。この包み込まれるような座り心地に混じり気なしの安堵感を得る。時代の移り変わりが激しい中だからこそ、この超然と佇むウェグナー作品に不動の美を感じるのだ。根を張って生きる人の日常にふさわしく、心の作用を満たしてくれるパパベアチェアは、この先も長い年月をかけてその役割を深く広く浸透させてゆくだろう。
Dining table with 2 leaves in rosewood by Arne Hovmand-Olsen
経年の美が凝縮、自然の優しさと力強さが合わさり言いようのない魅力を放つ。普段は天板裏側にすっぽりと収まっているエクステンションリーフが多人数に対応する、その伸縮自在の姿が並外れた美しさで陶酔させてくるのだ。テーブルを囲んだ際に生まれる会話までも影響を受けそうな想像力が膨らむ作品だ。
お客様各位
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
誠にありがとうございます。
勝手ながら、下記の期間を休業とさせていただきます。
*休業期間 2020年12月29日(火)〜2021年1月8日(金)
なお、休業期間中にいただきましたお問い合わせに関しましては、
1月8日(金)より順次ご対応させていただきます。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
2021年も、皆様への感謝と誠意を決して忘れることなく
務めてまいる所存でございます。
引き続きご愛顧を賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。
Swanky Systems
Lotus model 75 sofa/daybed by Rob Parry
艶やかな色彩と特徴あるデザインが気持ちを高ぶらせる作品です 。異素材の組み合わせを自由に操り、オランダならではの象徴的デザインを確立したRob Parry、彼の作品から醸し出るインダストリアルの風合いは、時代を超えてなお新しい印象を与え続けています。また、無駄なものを極力排除した作風に、幅広い手腕と卓越したセンスを感じずにはおれません。
Model SW86 in teak & oak by Finn Juhl
削り込まれた肘置きが背面から丸みを帯びた格好で一直線に伸びている。その姿が精彩を放っていて並々ならぬ雰囲気を醸し出す。これぞ、巨匠「フィン・ユール」の作品と唸ってしまう。自由に解き放たれた作家の感性が、塊となって椅子の中に集約している。成就したディテールのこだわりは誇りのようなものに姿を変え、磁力線ごとく見るものを引きつける。フィン・ユール作品に宿るまさに至妙のアイデアは、暮らしの美学を追求させるだろう。
3 seater sofa by Kho Liang Ie
濁った脳内も澄み渡っていきそうな洗練された作品。堂々としたデザインを眺めていると、この作家は家具作りに限らず何事にも満遍なく才能を発揮していたのではないだろうか、そう想像させるのは、なかなか類を見ない鋭い形状から。信念を貫く姿勢がディテールに現れていて、こちら側の経験と理解を誘う。膨らんだ想像力は枝状にどんどん伸びて行き、日常へと反映する。そのようにコツコツ積み上げた想像力は思いがけない道を生む。人々が自らの人生をデザインする喜びに目覚めさせてくれそうな妙味溢れる逸品だ。(しなやかで体に馴染みやすい良質レザーにて新調しております。)
Coffee table in teak & cane by Kurt Østervig
使い込むほどに信頼を勝ち得てゆく作家「クゥート・ウスタヴィ」の逸品。当時新たな表現形式となった美しい表情を奏でる籐細工が、家具を芸術の領域に押し上げている。挟み込むようにエッジを描いた天板のリズムが、使い手の満足度を汲み取って愛着へと形を変えさせる。長く残るモノには理由がある、作家が持ち合わせたモノ作りへの哲学を垣間見るような作品だ。
PK22 for E. Kold Christensen by Poul Kjærholm
「PK22」は思想の表現とも言えるのではないだろうか。ケアホルム独自のスタイルを貫こうとする気概が感じられる。心にこびりつく特徴あるデザインは、日常と非日常を行ったり来たりさせてくれる魔法の代物だ。視点に変化を与える作品との出会いは、興味の矛先を変える。作家の感性がそのまま形となった「PK22」、ケアホルムデザインが秘めた不思議な魅力は、私たちがいなくなった後も、永く永く人々に影響を与え続けるに違いない。(こちらの作品は、使うほどに味の出る良質レザーにて熟練職人が張り直しをいたしております。)
Bookcase & Cabinet with tambour doors by Peter Hvidt & Orla Mølgaard-Nielsen
細やかな配慮に表れる毅然たる感性が神秘さえ感じさせる。非常に特徴的なスタイルでフォルムを形状化している。素材の持ち味を最大限に引き出す術は見ていて気持ちが良い。隅々に至るまで見え隠れする信頼の塊、それらは自覚の深まりとなって日常大いに刺激をくれるだろう。それにしても何という美しさ、技巧を駆使して用いられた蛇腹の開閉は至ってスムーズであり、棚に現れる何者にも動じない表情は光輝さえ放っている。まるで家具になりすました芸術作品のようだ。ぜひとも実物をご覧いただきたい作品である。
Model Kontiki sofa by Arne Norell
吸い込まれるような座り心地にため息が漏れる「アルネ・ノレル」の秀作。形状に対して素材が持つ役割、体への作用を知り尽くした作家の追求が感じ取れる。円環を成し、健やかな時間を約束してくれる親しみ溢れる優しいソファーだ。外光が多く差し込む場所はどうだろうか。いや、心が一掃する空間にポツンと存在するのはどうだろう、いやはや何気ない日常の延長線上にあるのがとっておきの価値観を生むのだから皆で寛ぐスペースを確保しよう、小さな花がポツポツ咲くように美しい作品が笑顔やアイデアを誘う。傑作とはそういうものなのだろう。
European industrial folding table
ほんの少しの角度だったり見え方だったり、心ときめく隠し味が日常を楽しくさせてくれる。80年前に作られたインダストリアルテーブルは、時代のズレにさえ胸を膨らませる。知れば知るほど奥の深さを満喫させてくれるのだ。そこが粋で面白い。テーブルの存在、それは「時の流れの中」にあるように思う。
Coffee table in rosewood with Royal Copenhagen tiles by Severin Hansen Jr.
ひとつひとつ微妙に違った表情のタイルが、同系色調和とあいまって手作りゆえの温もりを引き出している。丁寧に作られた陶器を包み込むローズウッドの案配、言うまでもなくここは職人の腕の見せ所だろう。「実用を兼ねたオブジェ」とでも言うべき美しくしなやかなコーヒーテーブルだ。